Research_17 of LMMHS

リゾリン脂質を動員して大腸疾患を制御するsPLA2-IIIの新しい機能


 これまでにヒト大腸癌において、分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)の一種であるsPLA2-III(PLA2G3)のSNPがヒト大腸癌と相関すること、sPLA2-IIIの発現量が高いほど大腸癌患者の5年間生存率が有意に低いことが報告されていた。本研究では、sPLA2-III欠損マウスを用い、大腸上皮に発現しているsPLA2-IIIが大腸炎や大腸がんの促進に関わることを示した。この研究成果は「Scientific Reports」誌に掲載された。

Murase, R., Taketomi, Y., Miki, Y., Nishito, Y., Saito, M., Fukami, K., Yamamoto, K., and Murakami, M.
Group III phospholipase A2 promotes colitis and colorectal cancer.
Sci. Rep., 7, 12261, 2017

 sPLA2-III欠損マウスでは、アゾキシメタン(AOM)誘導大腸癌モデル、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導大腸炎モデル、AOM+DSSによる慢性炎症大腸炎モデルがいずれも軽減した。大腸のリピドミクス解析を行った結果、sPLA2-III欠損マウスではリゾホスファチジン酸(LPA)やリゾホスファチジルイノシトール(LPI)をはじめとする各種リゾリン脂質が野生型マウスと比べて有意に減少していた。LPAやLPIには炎症・癌促進作用があることから、sPLA2-IIIはリゾリン脂質の動員を通じて大腸炎や大腸癌を促進する機能を持つものと結論した。したがって、sPLA2-IIIを阻害する薬物は大腸炎や大腸癌の治療薬としての適用が期待できる。


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