Research_07 of LMMHS

マスト細胞のcPLA2αは線維芽細胞との細胞間相互作用により抗アレルギー性のエイコサノイドPGE2の産生を制御する


 本研究は、マスト細胞のcPLA2αが線維芽細胞との細胞間相互作用により抗アレルギー性のエイコサノイドPGE2の産生も制御することを示した。この研究成果は米国科学雑誌「Journal of Biological Chemistry」誌に掲載された。

Ueno, N., Taketomi, Y., Yamamoto, K., Hirabayashi, T., Kamei, D., Kita, Y., Shimizu, T., Shinzawa, K., Tsujimoto, Y., Ikeda, K., Taguchi, R., and Murakami, M.
Analysis of two major intracellular phospholipase A2s in mast cells reveals crucial contribution of cPLA2 alpha, not iPLA2 beta, to lipid mobilization in proximal mast cells and distal fibroblasts.
J. Biol. Chem., 286, 37249–37263, 2011

 マスト細胞には2種類の細胞内PLA2 (cPLA2αとiPLA2β) が発現している。cPLA2αおよびiPLA2β欠損マウス由来のマスト細胞を用いた解析により、(1) 抗原刺激に伴うリン脂質からのアラキドン酸遊離はcPLA2αに依存する、(2) マスト細胞の成熟に伴い一部のリン脂質からアラキドン酸の選択的遊離が起こり、これもcPLA2αに依存する、(3)iPLA2βの欠損はマスト細胞のエフェクター機能にも分化成熟にも影響しない、(4) cPLA2αによりマスト細胞から遊離されたアラキドン酸は隣接する線維芽細胞のPGE合成酵素mPGES-1によりPGE2に代謝される(transcellular biosynthesis)、(5) mPGES-1由来のPGE2はアナフィラキシー反応を負に制御する、などが明らかとなった。マスト細胞の産生するエイコサノイドPGD2とLTC4はアレルギーの増悪に関わることが知られていたが、今回の結果は、マスト細胞のcPLA2αが線維芽細胞との細胞間相互作用により抗アレルギー性のエイコサノイドPGE2の産生も制御することを示した初めての知見である。


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