Research_03 of LMMHS

sPLA2-III過剰発現マウスは血漿リポ蛋白質の変性、マクロファージの泡沫化と動脈硬化症に関与する


 本論文では、機能未知の分泌性ホスホリパーゼA2 (sPLA2) であるIII型sPLA2 (sPLA2-III) 過剰発現マウスが示す血漿リポタンパク質の異常と動脈硬化との関連について取り上げる。ヒトsPLA2-IIIをマウスの全身に過剰発現させたマウスは外見上異常が見られなかったが、血漿中のリポタンパク質(LDLとHDL)のリン脂質が顕著に分解されることを見いだした。sPLA2-IIIと反応したLDLはマウス腹腔マクロファージの泡沫化を著しく亢進し、その効果は従来報告されているsPLA2-V、sPLA2-Xに匹敵していた。更に、sPLA2-III過剰発現マウスをapoE欠損マウス(動脈硬化自然発症マウス)と交配した後に高コレステロール食を与えると、動脈硬化が促進するとともに、血中のリゾリン脂質、トロンボキサンA2の増加が観察された。また、ヒト動脈硬化巣では内因性のsPLA2-IIIの発現の著しい増加が認められた。以上の結果から、sPLA2-IIIは動脈硬化促進性のsPLA2アイソザイムのひとつであり、血管壁でリポタンパク質の分解(変性)を促進して動脈硬化に関わるものと推察される。したがって、sPLA2-IIIは動脈硬化の診断や治療の新しい標的になる可能性がある。

Sato, H., Kato, R., Isogai, Y., Saka, G., Ohtsuki, M., Taketomi, Y., Yamamoto, K., Tsutsumi, K., Yamada, J., Masuda, S., Ishikawa, Y., Ishii, T., Kobayashi, T., Ikeda, K., Taguchi, R., Hatakeyama, S., Hara, S., Kudo, I., Itabe, H., and Murakami, M.
Analyses of group III secreted phospholipase A2 transgenic mice reveals potential participation of this enzyme in plasma lipoprotein modification, macrophage foam cell formation, and atherosclerosis.
J. Biol. Chem., 283, 33483-33497, 2008.


Sato_JBC_01.tif


Sato_JBC_02.tif


Sato_JBC_03.tif


Sato_JBC_04.tif


Sato_JBC_05.tif

prevpage.png

nextpage.png