Research_02 of LMMHS

Ndrg1欠損マウスではマスト細胞の脱顆粒・成熟・アレルギー応答が減弱する


 我々は、マスト細胞が未成熟型から成熟型に変換する過程で機能未知遺伝子Ndrg1の発現が強く誘導されることを見出した。本論文では、Ndrg1のノックアウトマウスに見られるマスト細胞の成熟機能異常について報告している。Ndrg1-/-マウスでは組織中のマスト細胞が形態的に未熟であり、また刺激に伴う脱顆粒反応が顕著に低下した。Ndrg1-/-マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)は未熟な性質を保ち、分化成熟を誘導する培養系に置換しても、成熟型マスト細胞に特徴的な応答(例えばcompound 48/80に対する応答性の獲得)が見られなかった。さらに、本欠損マウスではマスト細胞に依存する即時型アレルギー(受動皮膚感作アナフィラキシー、全身性アナフィラキシー)が顕著に低下した。これらの結果から、Ndrg1はマスト細胞の成熟を促進する新規因子であることが明らかとなった。
 この論文は、J. Immunol.の巻頭の特集のひとつに選ばれた。

Taketomi, Y., Sunaga, K., Tanaka, S., Nakamura, M., Arata, S., Okuda, T., Moon, T.C., Chang, H.W., Sugimoto, Y., Kokame, K., Miyata, T., Murakami, M., and Kudo, I.
Impaired mast cell maturation and degradation and attenuated allergic responses in Ndrg1-deficient mice.
J. Immunol., 178, 7042-7053, 2007


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(A)野生型(+/+)マウスのマスト細胞が成熟するとNDRG1が誘導される。成熟前の野生型マスト細胞および欠損マウス(-/-)ではNDRG1は検出されない。
(B)成熟マスト細胞の透過型電子顕微鏡写真。野生型と比べて欠損マウスのマスト細胞では顆粒の発達が不十分であり、空洞化している。
(C)受動皮膚感作アレルギー反応。野生型マウスの耳では局所アレルギー反応が起こった結果エバンスブルー色素の漏出が顕著であるが、欠損マウスでは色素漏出がほとんど見られない。
(D)マスト細胞の脱顆粒反応(-HEXの遊離)が欠損マウスでは野生型マウスの半分程度に減少している。
(E)全身性アナフィラキシーショックによる体温低下モデル。野生型マウスでは抗原(DNP-BSA)の静脈内投与により体温が一過的に低下するが、欠損マウスでは体温低下が緩慢である。マスト細胞を持たないW/Wvマウスでは体温低下は全く起こらない。

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