Research_01 of LMMHS

sPLA2-V過剰発現マウスは肺障害によって出生直後に死亡する


 本論文では、分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)のひとつであるV型sPLA2(sPLA2-V)過剰発現マウスが示す肺の異常について取り上げる。sPLA2-Vをマウスの全身に過剰発現させたマウスは出生直後に呼吸異常により死亡した。肺の組織所見を観察したところ、過剰発現マウスでは肺胞構造の著しい異常が認められた。肺洗浄液より抽出した脂質の質量分析を行った結果、sPLA2-V過剰発現マウスでは肺サーファクタント(肺胞表面を覆うリン脂質膜)を構成するホスファチジルコリンとホスファチジルグリセロールの著しい減少が認められた。このことから、sPLA2-V過剰発現マウスでは肺サーファクタントのリン脂質の過剰分解が進行し、肺胞構造の崩壊に至ったものと結論した。sPLA2-Vが気道上皮細胞に内因的に発現しているアイソザイムであり、また炎症刺激により発現が誘導されることを踏まえると、本酵素による肺サーファクタントの代謝異常が喘息や重症呼吸器障害(ARDS)などの気道系疾患に関与している可能性が考えられる。一方、X型sPLA2(sPLA2-X)を過剰発現したマウスでは、sPLA2-V過剰発現マウスで見られたような肺異常は観察されなかった。これは生理的条件下の肺ではsPLA2-Xの不活性型から活性型への変換が起こらないためと考えられる。

Ohtsuki, M., Taketomi, Y., Arata, S., Masuda, S., Ishikawa, Y., Ishii, T., Takanezawa, Y., Aoki, J., Arai, H., Yamamoto, K., Kudo, I., and Murakami. M.
Transgenic expression of group V, but not group X, secreted phospholipase A2 in mice leads to neonatal lethality because of lung dysfunction.
J. Biol. Chem., 281, 36420-36433, 2006


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