研究紹介 of LMMHS

脂質から生命を考える
~QOL (Quality of Life) のためのQOL (Quality of Lipid) の研究~


 脂質はタンパク質、糖質と並ぶ3大栄養素のひとつであり、効率の良いエネルギー源であります。そして脂質は細胞膜の主要構成成分であります。さらに局所で一過的に産生され生理活性を発揮する生理活性脂質(脂質メディエーター)としての機能を持つことが知られています。
 それぞれの脂質メデイエーターは固有の生合成経路を経て産生され、特異的な受容体を介して標的細胞に特有の応答を引き起こします。脂質はタンパク質とは異なりゲノム(生命の設計図)にコードされていないため、遺伝学的情報を直接得ることはできません。このように脂質は研究対象として非常に扱いにくい物質ですが、ポストゲノム時代において非常に重要な研究対象であります。
 特定の脂質分子の生体内での機能や病態との関連は、その代謝生合成に関わる酵素あるいは受容体の生化学的性質や発現、さらにはノックアウトマウスの表現型から理論的に推定することが可能であります。古くは薬理学的見地から推測されてきた脂質メデイエーターの機能は、脂質生化学の研究領域への分子生物学の導入による生合成酵素や受容体のクローニングを経て、最新の細胞生物学的研究や遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの研究により分子レベルで解明されようとしています。本部門では脂質研究領域の最先端の研究を推進し、脂質ワールドの秘めた魅力に迫ることを目標に掲げています。

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主な研究成果


体に優しいオメガ3脂肪酸の意外な側面:オメガ3脂肪酸を動かしてアレルギーを動かす酵素の発見(2017)

リゾリン脂質を動員して大腸疾患を制御するsPLA2-IIIの新しい機能の発見(2017)

脂質が担う骨の新陳代謝の新しい仕組み:リン脂質による破骨細胞融合機構の発見(2017)

セラミドはなぜ肌の健康に重要か?:皮膚のバリア機能に必要不可欠な新しい脂質代謝酵素の発見(2017)

毛包のsPLA2の同定:sPLA2-IIE(2016)

sPLA2-IIDの免疫抑制機能の普遍性(2016)

ω3脂肪酸を遊離する脂質代謝酵素による腸炎と雄性生殖能の新しい調節機構の発見(2016)

皮膚の健康と病気を調節する脂質の新しい役割の発見(2015)

脂肪細胞から分泌される脂質代謝酵素による肥満の新しい調節機構の発見(2015)

体に優しい脂質を働かせ、炎症にブレーキをかける酵素の同定(2013)

アレルギーを引き起こす新しい脂質代謝経路の発見(2013)

マスト細胞のcPLA2αは線維芽細胞との細胞間相互作用により抗アレルギー性のエイコサノイドPGE2の産生を制御する(2011)

体毛の恒常性維持におけるsPLA2-Xの役割(2011)

生殖、食餌中のリン脂質の消化、神経機能に関するsPLA2-Xの役割(2011)

雄性生殖系におけるsPLA2ネットワークの解明(2010)

sPLA2-III過剰発現マウスにおける炎症の自然発症(2009)

sPLA2-III過剰発現マウスは血漿リポ蛋白質の変性、マクロファージの泡沫化と動脈硬化症に関与する(2008)

Ndrg1欠損マウスではマスト細胞の脱顆粒・成熟・アレルギー応答が減弱する(2007)

sPLA2-V過剰発現マウスは肺障害によって出生直後に死亡する(2006)